絶対音感は何歳まで身につく?最新研究と家庭でできる育て方
絶対音感とは何か
絶対音感とは、ある音を聞いた瞬間に、その音が「ド」なのか「ファ」なのかを、他の音と比較せずに言い当てられる能力のことです。たとえば電車の発車メロディや救急車のサイレンを聞いて、「これはミの音」と即座に分かる人がそれにあたります。
これに対して、ある音を基準に他の音の高さを判断する能力を「相対音感」と呼びます。一般的なメロディの聴き取りや歌唱は、絶対音感がなくても相対音感があれば十分にこなせます。
絶対音感の保有率
世界的に見ると、絶対音感を持つ人の割合は1万人に1人程度と言われていましたが、これは古い数字です。音楽教育が盛んな国・地域では保有率がぐっと高くなり、特に日本や中国などのアジア圏では、音楽を学んだ子どもの数十%が絶対音感を持つという報告もあります。
これには「言語の特性」も関係しているとされ、声調言語(中国語など)の話者に絶対音感が多いという研究もあります。日本語は声調言語ではないものの、幼少期の音楽教育の普及率が高いことが、保有率の高さに繋がっていると考えられています。
「臨界期」は本当にあるのか
かつての音楽教育の世界では、「絶対音感は6歳までに訓練しないと身につかない」という説が定説でした。これは「臨界期仮説」と呼ばれ、脳の発達が活発な幼児期にしか身につけられないという考え方です。
近年の研究では、この臨界期の存在自体は支持されているものの、その範囲は従来考えられていたより少し広いことが分かってきています。
つまり、目安としては7歳ごろまでが習得のチャンスと考えるのが現実的です。ただし、これはあくまで「絶対音感」の話で、後述するように相対音感や音楽的な耳は何歳からでも育てられます。
「臨界期を過ぎると音楽の才能が伸びない」というわけではありません。絶対音感は音楽の能力の一側面に過ぎず、プロの音楽家でも絶対音感を持たない方は大勢います。臨界期の存在に振り回されすぎないことが大切です。
絶対音感を身につけるメリットとデメリット
メリット
- 譜読みが速くなる: 聞いた音が即座に音名で分かるため、楽譜と音の照合がスムーズになります
- 聴音課題に強い: 音楽の試験や音大入試で出題される聴音問題で有利です
- 耳コピが容易になる: 楽譜のない曲も、聴くだけで音名が分かるので採譜が早いです
- 調律のずれに気づく: ピアノなど楽器の微妙な音程のずれを察知できます
デメリット(意外と知られていない)
- 移調が苦手になることがある: 楽譜と違う調で演奏されると違和感を強く感じてしまう人もいます
- 古楽の演奏で違和感を感じる: バロック音楽など、現代と異なる音律で演奏される音楽に対して「ずれて聞こえる」と感じることがあります
- 日常の音が気になる: 換気扇の音や電子音まで音名で聞こえてしまい、人によっては疲れる場合があります
絶対音感は「あれば便利、なくても問題なし」と捉えるのが現実的です。プロのオーケストラ奏者でも絶対音感を持たない方は数多くいらっしゃいます。
家庭でできる音感トレーニング
絶対音感の本格的な訓練は専門家のもとで行うのが理想ですが、家庭でも基礎的な耳を育てるトレーニングは可能です。
1. 短時間・高頻度を意識する
音感トレーニングは「毎日5分」を「週1回30分」よりも優先します。短時間でも毎日続けることで、脳が音の高さを「日常的に処理する情報」として認識するようになります。
2. 単音から始める
いきなり和音やメロディに取り組むのではなく、まず単音(ド・レ・ミなど)を1音ずつ覚えることから始めます。最初は3〜5音に絞って完璧にしてから、徐々に音域を広げます。
3. 視覚と聴覚をセットで覚える
音だけで覚えるより、楽譜の音符と音をセットで覚えると定着しやすくなります。フラッシュカードやアプリで「音符を見る → 音を聴く → 音名を答える」を反復するのが効果的です。
当サイトの音符学習アプリ Music Flash は、まさにこの「視覚と聴覚をセットで覚える」トレーニングに対応しています。先生モードでは音符を見せて答えを表示でき、自習モードでは自分で答えながら学習できます。1日5分の積み重ねが、音感の土台を作ります。
4. 生活の中で音を意識する
「いま流れているBGMの最初の音は何かな?」「電子レンジの音は何の音?」など、生活の中の音を音名で表現する遊びを取り入れると、音感は自然に育ちます。正解・不正解を気にせず、楽しむことが大切です。
5. ピアノの音を基準に使う
家にピアノやキーボードがあれば、それを基準音として活用しましょう。ピアノを習っているお子さまなら、レッスンの一部に音感の遊びを取り入れるのがおすすめです。ピアノは音程が安定しているので、音感トレーニングの基準楽器として最適です。
「絶対音感がつかなかった」と落ち込む必要はない
音感トレーニングをしたのに絶対音感が身につかなかった、というケースは珍しくありません。これは個性であり、能力の優劣ではありません。
むしろ、多くのプロ音楽家が頼っているのは相対音感です。相対音感は何歳からでも鍛えられ、音楽家としての成長に直接的に役立ちます。お子さまが音楽を楽しんでいるなら、絶対音感の有無に関わらず、その姿勢こそが最も大切な「音楽の才能」です。
まとめ
絶対音感は、おおよそ7歳ごろまでがトレーニングの目安です。ただし、これは「絶対音感」に限った話で、音楽的な耳や音感そのものは生涯にわたって育てられます。
大切なのは「絶対音感を身につけさせなきゃ」と焦ることではなく、お子さまが音楽を楽しめる環境を作ること。短時間・高頻度の関わりを習慣にすれば、絶対音感の有無に関わらず、お子さまの音楽的な土台は着実に育っていきます。